2017年8月9日、北朝鮮がグアム近海に中距離弾道ミサイル4発を撃ち込む計画を検討していることを発表。発表の中で "「火星12(中距離弾道ミサイル)」は日本の島根県、広島県、高知県の上空を通過する" と発言があり、それに対応する格好で島根、広島、愛媛、高知の4県にPAC3(ペトリオットシステム:PAC3/Config.3形態)が展開されました。
※ニュースや新聞など一般的には "パトリオット" と表記されることが多いですが、防衛省や実際に運用している航空自衛隊では "ペトリオット" と表記されています。そのためこのページでも "ペトリオット" と表記しています
広島には12日に陸上自衛隊海田市駐屯地にPAC3(ペトリオットシステムPAC3/Config.3形態)(以下ペトリオットシステム)が展開されました。このページの写真はすべて翌13日に撮ったものです。
ペトリオットシステムは地対空ミサイルシステムのひとつです。日本では航空自衛隊の高射隊が運用しています。"ペトリオット"でミサイルそのものを示したり、ミサイルを発射するためのシステムすべてを示したりするのでややこしいことになったりしますが、ミサイルを発射して目標を撃墜するためにはさまざまな情報が必要であり、それらを統合して適切に運用してはじめて防空システムとして成立するということは理解しておかなければいけません。
上を頭に入れておいてPAC3に関して。ニュースなどで言われる "PAC3" は、弾道ミサイルに対応するミサイル "PAC3弾" を採用・運用するペトリオットシステムのPAC3/Config.3形態を指すといってよいでしょう。
システム、システムと記しておきながら、ここまで載せている写真はLS・発射機ばかりなのですが(^^;、下の写真を見てみると...
発射機の後ろにペトリオットシステムを構成する機器がいます。写真左端でまっすぐアンテナをあげているのがAMG・アンテナ・マスト・グループ、四角の中に丸いナニカ(レーダー)が見えるのがRS・レーダー装置。自衛隊員の姿も見えますね。差し迫った脅威がないので落ち着いた雰囲気です(差し迫った脅威があったら私もここで写真を撮ってる場合ではない(汗))。
発射機を大きく。1台の発射機で最大16発のPAC3弾を搭載します。この発射機にはミサイルを格納するキャニスターが2つついていますが、右側は4つにわかれているのがわかります。1つのキャニスターにPAC3弾が4発、キャニスター4つで最大16発を搭載するというわけです。左側のキャニスターには搭載されていないのかな。ちなみにPAC2の場合は1つのキャニスターに1発となります。
こちらは後ろ側の発射機。キャニスターを見る限り、こちらはPAC3弾を8発搭載しているのかな?
今回の展開で実際にペトリオットが活躍することはないでしょう。しかし東アジアは北朝鮮をはじめとして脅威があることは間違いありません。PAC3は迎撃範囲が狭いこともあり、"THAAD(終末高高度ミサイル防衛システム)" の導入が検討されたり、ここ最近は陸上のSM-3対応イージス艦といえる "イージス・アショア" の導入検討というニュースが流れています。
導入する場合、どの自衛隊が運用するのだろう? ペトリオットシステムを使うPAC3は航空自衛隊が第2術科学校で教育を行い運用していますが、THAADはペトリオットシステムで運用できないのでイチからはじめないといけません。半面、イージス・アショアを動かないイージス艦とすれば海上自衛隊にそのノウハウがあるはず...
何もしないのがコストもかからずもっともよいのですが、相手(しかもこちらとは考え方が異なる相手)があることなのでこちらの希望通りにはいきません。自衛隊が持っているその武力を実際に使うようなことがないことを願うばかりです。