起重機船 “さんこう”

2022年6月25日

5月27日の呉湾艦船めぐりでみた起重機船"さんこう"、進水して100年経った今も現役で活躍しているということを聞いて興味を持ったのです。より近くで見てみようと翌々日の5月29日に江田島へ出かけました。

起重機船 さんこう

巨大な機械

“さんこう"は江田島の秋月港近くの沖にいました。それにしても巨大な機械というのは男子の心(こういう表現も今はよくないのかな(苦笑?)を惹きつけます。

起重機船 “さんこう"

起重機船というのは以下のように定義されます。

港湾工事、海洋開発、サルベージ、港湾荷役等の目的のため、各種重量物のつり揚げを行う作業船で、自航、非自航があります。起重機の型式により、ジブ固定・ジブ俯仰・旋回式等があります。

一般社団法人 日本作業船協会より

“さんこう"は350トンの吊り上げ能力があるそうですが、区切りよく300トンと記されることが多いそう。呉海軍工廠が三菱造船(当時)神戸造船所から受領して間もない頃に海軍大臣宛に上申した文書の中でも"三百噸起重機"とあります。

ちなみにこの文書では、以下のようなことが記されています。私の認識間違いもあるかもしれませんので、気になる方はアジア歴史資料センターの資料をご確認ください。

受領した"三百噸起重機"、機械として整理されてるけど、自航できる船に装備されている。しかもその大きさは、全長270尺・幅92尺・喫水10尺・排水量5400トンあり、事実は大きな起重機船。今後の保管・使用、修理のことを考慮すると、機械ではなく雑役船に編入してほしい。

大正12年にそんなやりとりがあった起重機船、所属は軍から民間に変わっていますが100年経った今も活躍しているというのはホントに凄いことと思います。

戦後間もない頃

戦後間もない呉の空中写真をみると、”さんこう”を見つけることができます。1947(昭和22)年5月に米軍が撮影した写真です。

戦没した艦の解体作業を行っているのでしょうか。ひょっとしたら"さんこう"ではないのかもしれませんが、戦後間もない呉でこれだけ大きな起重機船がそんなにあるはずもないので"さんこう"に違いない(と思う)。

2022年の"さんこう"

江田島で"さんこう"を見た日、"さんこう"の後ろには終戦までは呉海軍工廠だった場所… JMU呉事業所や海上自衛隊呉基地が見えました。海上自衛隊最大の護衛艦"かが"をはじめ、桟橋には多くの艦たちが停泊しています。

“さんこう"の後ろに呉基地が見えます

“さんこう"が大正の時代から終戦まで多くの時間を過ごした呉海軍工廠、その時間は平坦なものではありませんでしたが、今は少なくとも表面上は平和な時間が流れていると言ってよいでしょう。

これから先、"さんこう"だけでなく、その他の起重機船も戦没した艦の解体作業をすることなんてことがないように。

参考にしたページなど