備後八幡駅近くに残るトロッコの遺構(広島県庄原市)
1か月ほど前の7月29日になりますが、庄原市東城町の備後八幡駅近くに残っているトロッコが使っていた橋を見に出かけました。
帝国製鉄株式会社
“たたら製鉄"が盛んだったころ、東城は"くろがねどころ"として広島の中でも製鉄業が盛んな場所のひとつでした。"たたら製鉄"は明治中頃まで日本の製鉄の中心だったといってもいいでしょう。しかし、明治後半になると安価な海外品が大量に輸入されるようになり"たたら製鉄"は衰退をはじめます。
“たたら製鉄"が、活路を見い出したのが軍需でした。海外品にはない"粘り"をもつ"たたら製鉄"は軍需で存続することに。そんな中、東城を地元とする野島国次郎は"たたら製鉄"の流れを引き継ぐ木炭銑鉄炉を使った中国製鉄株式会社を設立しました。第一次世界大戦による鉄鋼需要の拡大と価格高騰で事業を拡大しましたが、大戦が終了すると需要急減で事業を停止します。
その後1927(昭和2)年にこの竹森で事業を再開し、1931(昭和6)年に帝国製鉄株式会社を設立しました。
備後八幡駅につながるトロッコ
その帝国製鉄株式会社と備後八幡駅の輸送を担ってたのがトロッコです。トロッコは原料となる木材や砂鉄を工場へ、製品を駅に運搬していました。
備後八幡駅が開設されたのが1935(昭和10)年のことなので、トロッコができたのはそれ以降でしょう。1947(昭和22)年の写真に芸備線とトロッコの線路が写っています。
備後八幡駅にいた方にいろいろお話をうかがうことができました。その方、私たち(ツマも一緒でした)がトロッコ橋のほうに行ったのを見ていらっしゃったようで「トロッコの橋を観に行ったの?」と話しかけていただき、いろいろな話を聞かせてくれたのです。
(トロッコの)橋を渡った先に帝国製鉄竹森工場があったこと、このトロッコは川から水を引いて水車を回すことで動力を得ていたこと(驚)、昔はこの橋は木製で人も使っていて、そんなときにトロッコがやってくると左右に大きく揺れて怖かったといった話とか(笑)。
そもそもこの鉄橋でさえ、"こんなに細いもので大丈夫なんだろうか?"と心配になるほど(汗)。トロッコなので車両自体は大したことないのかもしれませんが、材料や出来上がった鉄を載せて運んでいたんですよねぇ…
専用のトロッコを敷設するほど活況だった帝国製鉄でしたが、コストのかかる木炭銑鉄炉は品質をあげた他の方式の鉄との競争に破れます。帝国製鉄株式会社竹森工場は1963(昭和38)年に廃業しました。
そんな栄枯盛衰を伝えるのがこのトロッコ橋の遺構です。私は夏休み(といっても私は夏休みはありませんが(汗))に近県の産業遺産を訪れようと探して見つけました。遺構から過去を調べるのはとても楽しい。これからも、メジャーじゃなくても興味のあるいろいろな産業遺産を見つけて訪れたいと思います(^-^)。
参考にした書籍など
- 大蔵省印刷局 [編]『官報』1931年12月07日,日本マイクロ写真,昭和6年. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2957950
- 写真展 芸備線 / 広島県立文書館
- たたら製鉄の発展形態としての銑鉄製錬炉 「角炉」の構造 永田 和宏 / J-STAGE
おまけ:7月29日は
上に"備後八幡駅にいた方"と記しましたが、訪れた7月29日は… そう、3月23日に発生した落石により運休していた芸備線の東城~備後落合間の運行が再開した日です。それを動画に収めようといらっしゃっていた方でした。と、そんなことを記している私も運行再開のこの日にあわせて訪れた向きです(笑)。
この備後八幡駅で降りられたお母さんとお子さん、駅にお父さんが車で迎えにこられていました。東城から乗ってみたという感じでしょうか? そして車内は多くの乗客がいましたが、青春18きっぷを利用しているのかなという感じ。以下は沿線に住んでいない者が言うべきものではないのかもしれませんが…
利益が出ていない路線については日常の生活で利用してもらって、はじめて存続云々の話になると思います。といっても、3往復/日では日常の生活で使うなんて無理です。もっとも、そもそも沿線住民が少ないので利用するかもしれない潜在利用者数自体が限られています。そんなことを思うと、存続させるためには存在する価値や意味を利益以外に求めないとあり得ないような。
Posted by たか++(たかひろ)
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