光海軍工廠跡(山口県光市)

5月18日のことです。ツマは実家へ帰省していて不在、おまけに天気もよい… 私の趣味全開の場所に出かけようと(笑)。"どこに行こうかな?"と選んだのは、過去に見た工廠の門札や回天の頭部など7点を市の有形文化財に指定したことを思い出した光市です。

光海軍工廠 戦没者慰霊碑 2024年5月18日
光海軍工廠 戦没者慰霊碑 2024年5月18日

9年ぶりの光市

光市を最後に訪れたのはいつだろうと振り返ってみると、2015年12月でした。もう9年ほど前になります(驚)。ちなみにはじめて光市を訪れたのは2009年10月のことなので、15年前… そりゃ、私も歳を取るわけです(苦笑)。

この日最初に訪れたのは有形文化財に指定された回天の頭部などがある光市文化センター。展示活用を考えていく旨の新聞記事を読んでいたので、"2015年12月に見たときから何か説明がかわっていたりするかな?"と思ったのですが、特に変わった感はなく。活用はまだ検討中なのかもしれません。

そして訪れたのは戦没者慰霊碑。すぐ近くの光廠会記念碑は訪れていたのですが、なぜか戦没者慰霊碑ははじめての訪問。

光海軍工廠 戦没者慰霊碑 2024年5月18日
光海軍工廠 戦没者慰霊碑 2024年5月18日

碑文を記します。

戦没者慰霊碑 碑文

光市は、太平洋戦争末期の昭和20年(1945)8月14日、光海軍工廠への空襲で尊い命を失った、旧海軍工廠職員、動員学徒など738人のほか、身元が確認された一般市民10人を含む多くの犠牲者、ならびに人間魚雷回天特別攻撃隊員の御霊を追悼するため、昭和35年8月にこの碑を建立しました。
また、昭和20年7月24日、光市沖の対空戦により祖国に殉じた、旧海軍駆逐艦「樺」と「萩」の乗員38人の御霊を追悼し、ここに合祀しました。
わたしたち光市民は、この地に永眠した方々の御霊に心からの祈りを捧げ、戦争の悲惨さと平和の尊さを次の世代に継承するとともに、世界の恒久平和の実現を切に願います。
令和2年(2020)5月

光 市

光海軍工廠は1940(昭和15)年10月に開庁しました。砲熕部が設置され職員40名、従業員451名ではじまりましたが、1941(昭和16)年に製鋼・水雷部が設置され職員230名、従業員9,000名に。その後1942(昭和17)年には造機部、翌1943(昭和18)年には爆弾部が設置されます。そして戦況悪化に伴い国民学校や高等女学校からの学徒動員もはじまり、光海軍工廠の従業員は30,000人を超えるほどになりました。

そんな光海軍工廠が大規模な空襲にあったのは終戦前日の1945(昭和20)年8月14日。工廠の物理的被害はもちろん、人的被害も大きく、碑文にあるように工廠内で738名、工廠外で10名(ともに身元がわかる方のみ)が犠牲になりました。

なくなった遺構

光海軍工廠に限ったことではありませんが、戦争を知る遺構が少なくなってきています。

光海軍工廠 旧本部庁舎 2009年10月3日
光海軍工廠 旧本部庁舎 2009年10月3日

たとえば武田薬品工業敷地内にあった本部庁舎。2009年に訪れたときにはあったのですが、2015年に訪れたときにはなくなっていました。今回訪れてなくなっていたのがこちら。

工廠の敷地と住宅地を隔てる壁 2024年5月18日
工廠の敷地と住宅地を隔てる壁 2024年5月18日

工廠の敷地と住宅街を隔てる壁です。上写真の右のほう、壁から金網になっているのがわかるでしょうか。ここから先がずっと金網になっていました。この工廠の敷地と住宅街を隔てる壁、2015年に訪れるきっかけだったのですが、取り壊されたようです。耐震とか考えると危なかったのか、単純に老朽化していたためなのかわかりませんが… いやっ、見るからに壊れそうな壁ですね(汗)。安全を考えると仕方なかったのでしょう。

回天の碑

回天の碑も訪れました。

光市 回天の碑 2024年5月18日
光市 回天の碑 2024年5月18日

回天の光基地は海軍工廠の工員養成所に1944(昭和19)年11月に開設されました。1945年(昭和20年)2月の千早隊にはじまり、神武隊、多々良隊、天武隊、轟隊、多聞隊が出撃し、多くの若者が命を落としました。

終戦時、光海軍工廠の水雷部第二調整工場には3基の回天がありました。出撃すれば必死の兵器… そんなものを使う状況になるまで終戦させることができなかった政治家と軍幹部。これから先、そんなことが起こらないように。

この回天の碑を訪れて、このあと訪れるところを決めました。それについては別ページに記したいと思います。

参考にした資料など

  • 光市広報 2015年8月25日号 Vol.260 特集 70年前のあの日を忘れない
  • 海軍工廠令中改正・御署名原本・昭和十五年・勅令第五一三号 / 国立公文書館デジタルアーカイブ
  • 「兵器目録」JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.C08011309800、昭和20年8月31日 保管品目録 光海軍工廠 (①-引渡目録-307)(防衛省防衛研究所)